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ピア効果とは、ピアボーナスとは

今回と次回は、仕事場における周り同僚の影響と評価について関係するキーワードについてご説明したと思います。 具体的には今回は「ピア効果」と「ピアボーナス」について、次回はその関連ワードの「ソーシャル・レコグニション」についてご説明する予定です。



目次


ピア効果とは

「ピア効果」の「ピア」とは、英語の「peer」からきており、「同僚、同輩、仲間」を意味します。つまり「ピア効果」とは、仲間や同僚などが作用し、お互いの行動、生産性に影響を与え合うことをいいます。


「ピア効果」には「正のピア効果」と「負のピア効果」があります。


「正のピア効果」は、能力や意識のレベルの高いピア(仲間)が、同じ環境に集まってお互いに切磋琢磨し合うことで、その集団がレベルアップするだけでなく、個々も成長するという相乗作用をもたらします。 逆に「負のピア効果」は、集団の中でお互いの悪い部分が影響し合い、集団としても個人としてもレベルダウンしてしまう状態です。


ピア効果のわかりやすい例が、ピア同士の「競争」とそれを支える「切磋琢磨」です。 アメリカの研究では、自転車競技の走行タイムを使って実験が行われました。単独で走行した場合のタイムと、数人で競争して走行した場合のタイムとで比較すると、競争した場合のほうが速かったのです。 当然これは複数人で走ったことにより、各自に競争意識が芽生え、潜在的に「相手に負けたくない」という気持ちが強く働き、単独走行よりも強い力を引き出したという可能性を表しています。


仲間との競争が成長させることは、我々が人生の中の様々な競争を通じて、経験的に理解できると思います。




負のピア効果にご注意

子供の頃、親に「なるべく学力の人と友達になりなさい」と言われたことがある人もいるのではないでしょうか。親としては「学力の高い友人と付き合えば、学力の高い友人から勉強の仕方を教わったり、進学への意欲なども影響を受けてくれるだろう」と潜在的にピア効果に期待していたのかと思います。


確かにこの「レベルの高い友人からの影響」というのは、正のピア効果の1つです。しかしながら、正のピア効果を期待しながら、負に働いてしまう例もあります。


埼玉県が実施している「埼玉県学力・学習状況調査」でピア効果の測定実験を行いました。 平均的な成績が良いクラスに1年間所属した後、その生徒の成績が前年度の始めと比較しました。結果は、学年、性別、科目に関わらず、負のピア効果が一定量存在すると確認されたのです。 研究によると、負のピア効果の理由として、自分より成績の良い同級生がいることによって、自分の相対的な学力が低いという自己認識を持ってしまい、学習意欲が低下する可能性が指摘されています。




より高いピア効果を得るために

ただ単に複数人で競わせるだけでは「正のピア効果」は得られません。構成を間違えると「負のピア効果」ばかりが生じてしまうこともあるでしょう。 より高い「正のピア効果」を得るためには、「誰」と、「どう競い合う」かをしっかり設定する必要があります。


ポイントは構成員の「レベル調整」です。 競争する相手とレベルの格差が大きすぎると、いい影響が出にくいと言われています。低いレベルの人はあきらめて努力を放棄してしまい、高い方も慢心して向上意欲を失ってしまうからです。双方に良くない結果ですね。


具体例として、アメリカの空軍養成学校で行われた実験があります。 全体の成績を底上げするために、成績優秀な生徒のクラスに成績の悪い生徒を混ぜて、成績の悪い生徒がレベルアップするかを実験しました。 結果は、成績が悪い生徒の成績がより悪化してまうというものでした。この実験でもわかる通り、競争相手は、近いレベルの者同士を組み合わせることが良いようです。お互いに「油断したら負ける」というぐらいの力関係で切磋琢磨させることにより、正のピア効果が引き出されます。



人事施策に「ピア効果」を利用する

「ピア効果」は、教育心理学や行動心理学の研究の中で注目されていましたが、教育分野に留まらず、労働経済学でも「ピア効果」が注目されています。経営者の要望する生産性の高い組織やチームを作るために、「ピア効果」を上手に取り入れた人材育成施策が有効だからです。組織、チーム内で適切な競争を促すことで、従業員の生産性と能力を向上させることができるのです。


また、個人作業よりもチーム作業の方が、生産性が上がることが分かっています。そのため、従業員個人に成果報酬を出すのではなく、チームに報酬を出す方が生産性を高められるとし、そうした制度を採用している企業も増えてきました。 このチームにおけるピア効果は、専門性の高い知識や能力を有するブルーカラー労働者の環境で特に効果を発揮するという結果が出ています。チームメンバー同士で教え合い、弱点を補完し合う関係が構築され、成果を出しやすくなるようです。また、チーム作業に重視すると、周りのメンバーの足を引っ張らないようにという意識が芽生え、自己研鑽するので、個々人の能力・生産性向上にもつながっていいきます。


ただし、先にも述べました通り、組み合わせ次第では「負のピア効果」が現れてしまい、生産性が落ちるだけでなく、職場を無駄に疲弊させ、雰囲気を悪くして今うケースもあります。ピア効果を引き出すためには、個性や性格などを加味して、細かな組み合わせのマネジメントが必要とされます。



高いピア効果を発揮する「ピアボーナス」

前述の「チーム報酬制度」は、相互に助け合い、チームとしての成長をモチベーションにすることで生産性を上げ、かつ負のピア効果を生じさせないようにと考えられた制度です。 「チーム報酬制度」とは違った角度で「ピア効果」を出す試みとして、「ピアボーナス」という制度があります。


ピア・ボーナスとは、従業員同士が互いに仕事の成果や行動を評価し、報酬を贈り合うことができる評価制度です。HRテクノロジーの進歩で、従業員間で報酬を贈り合えるツールが登場したことで、ピアボーナス制度は大きな話題となっています。


本来、従業員に金銭的な報酬を与えるのは組織の役割ですが、ピアボーナス制度は、その権限を従業員に一部委譲します。そして、数値に表れにくい、「縁の下の力持ち」的な働きをしている同僚などに、貢献度の評価や感謝の印として同僚から報酬を贈ることができます。


ピアボーナス制度を導入することにより、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高まります。旧来の評価制度では、数字的に大きな成果を上げる人が目立ち評価され、日々細やかな仕事にコツコツと取り組んでいるタイプの人には、なかなかスポットが当たりませんでした。 ピアボーナス制度を導入すれば、周囲のメンバーがそういった人たちを評価することができるので、モチベーションも上がり、結果として組織への愛着やコミットメントを高めることができます。何よりも人から努力を認められると、嬉しいものです。しかも、賞賛という非金銭的な報酬だけでなく、同時に金銭的な報酬も得られるのですから、持続的なモチベーション向上に働く効果は相当高いと思われます。


また、ピアボーナス制度を導入した事例でよく目にするのが、「組織の雰囲気が良くなった」「組織内のコミュニケーションが活性化した」と言った組織風土改善に対する効果です。普段なかなか言葉で伝えられない感謝をピアボーナスで表すことによって、ピア(同僚)に対する関係性の意識が変わるのです。




ピアボーナスを取り入れたサービス

「ピアボーナス」を取り入れた人事評価システムとして、Fringe81株式会社の「Unipos(ユニポス)」が話題になりました。PCだけでなく、スマホからピアボーナスを贈ることができるので、感謝の気持ちをこまめに記録して、従業員間での相互評価の仕組みを簡単に作れます。多くの企業で導入が進んでいるのです。



株式会社メルカリでは、2017年9月にUniposを導入しました。Uniposのことを独自に「メルチップ」と名付け、社内にピア・ボーナス制度の浸透を図ったそうです。更なる促進活動として、メルチップを一番多く送った人と一番多く送られた人を表彰する制度を設けたりもしています。メルチップを通して賞賛し合う文化やコミュニケーションの活性化、バリューに沿った行動が可視化されたことで人事評価への活用など社員同士の理解にも役立っているようです。




最後に

「ピア効果」いかがでしたでしょうか? 「ピア効果」は競争面での効果が注目される傾向にありますが、ピアボーナスなどの斬新な発想がHRツールによって可能になり、モチベーションアップやコミュニケーション力向上など人材育成として新たな活用方法を生み出しています。

次回はピアボーナスのつながりで、注目度が増している「ソーシャル・レコグニション」についてご紹介したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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