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ADDIEモデルとは

前回は、インストラクショナルデザイン(ID:Instructional Design)について、その歴史やメリットなどをご説明しました。


今回は、インストラクショナルデザインで使われる「IDプロセスモデル」で有名な「ADDIEモデル」について、もう少し詳しくご説明いたします。



目次



ADDIEモデルとは

前回のキーワード「インストラクショナルデザイン」で、IDが「学習理論(心理学)」「コミュニケーション学」「情報学」「メディア技術」などを利用した「インストラクショナルデザインの理論・モデル」に基づいて行われるという説明をしました。そして、学習後の学習者のゴールイメージを明確にして、そこにたどり着くためのプロセスを分析・研究して設計するために「インストラクショナルデザインの理論・モデル」を利用する、と説明したと思います。


ADDIEモデルはこの「インストラクショナルデザインの理論・モデル」の「IDプロセスモデル」の1例にあたります。「IDプロセスモデル」は、教育のシステム設計を5つのプロセスに分けて、それを繰り返しながら、より良い教育システムを作っていくというものです。


5つのプロセス(基本モデル)はこのようになってました。

 
  1. 分析(Analysis)・・・問題・課題の洗い出しと分析、対象者や解決策の検討

  2. 設計(Design)・・・具体的なゴール設定、成果に結びつく学習目標、そのための手段などをデザイン

  3. 開発(Develop)・・・教材、ツールの開発、教授プランの作成

  4. 実施(Implement)・・・教材を使って実施

  5. 評価(Evaluate)・・・システムの評価、問題点の洗い出し

 


このように、ADDIEモデルは、「分析(Analysis)」「設計(Design)」「開発(Develop)」「実施(Implementation)」「評価(Evaluation)」の5つのステップに沿って研修を設計・推進します。このプロセスを繰り返しながら、受講者の評価や研修・教材の問題点をフィードバックから改善しつつ、より良い教材を作っていくわけです。


では各項目をもう少し詳しく見ていきましょう。



① 分析(Analysis)

一番最初のステップである「分析」では、理想と現実とのギャップを認識し、ふさわしいゴール(最終効果)を決めていきます。

例として、企業の研修者を対象にするならば、この分析のフェーズで決めることとしては以下のような内容を決めます。

 
  1. 研修の対象の設定

  2. 研修の内容の検討

  3. 研修の目標の設定

 

1番目の「研修の対象の設定」では、教育システムを受講する対象者を明確にします。課題から問題となる人を見つける、もしくは、現実に課題がある人にどうなって欲しいかなどを分析します。


2番目の「研修の内容の検討」では、そのためには、どのようなスキル、知識がターゲットとなるか「課題」を明確にし、それを身につけるのに適切な学習メディアを選択します。 その際にコストや利益、投資に対する金額的な見返りを計算することも大切です。 「課題」に対して、受講修了後の効果が、現実の仕事に役立つかどうかをしっかりと判断して下さい。 また「課題」がリーダー育成などの長期的経営の視点を必要とするものなのか、方策的(短期的)ニーズで、今すぐ必要な人材を短期で仕上げるのか、などによっても方法のチョイスが変わってくるかと思います。


3番目の目標設定は、具体的に「どういうことができるようになるか」まで、具体的に設定します。 (例)「◯◯について説明できるようになる事」「自分の判断で、○○について、□□ができる事」 ここを具体的に設定しないと、「受講しただけ」で終わることになってしまうからです。



② 設計(Design)

「設計」のフェーズでは、目標達成に向けた具体的なカリキュラムの設計を行ないます。①の分析を元に目標達成までのステップをより明確にしてゆきます。この作業が研修の「設計図」を描くプロセスになります。


具体的には下記のようなことを決めていきます。

 
  1. スケジュール

  2. 制作チーム

  3. 教材の構成

  4. インターフェースデザイン

  5. 教材に統一感を持たせるためのルール決め

  6. サポート体制

  7. 学習結果の評価法

 

できるだけスケジュールは、メンバーの仕事量から考えて、適した期間を想定したいものです。特に、テストなどは時間がかかるので、あらかじめ余裕を持った期間を押さえる必要があります。


制作チームやサポート体制なども、設計フェーズでしっかり準備しなくてはいけません。特にサポート体制は実施フェーズに入る前にアサインを済ませておく必要があります。サポートが足りないと、せっかくデザインして教育システムの効果が落ちてしまうからです。 研修をブレンドするケースがほとんどだと思いますが、講義形式なのか、ワークショップ形式なのか、アクションラーニングを行うのかなど、条件によって必要とされるスタッフの数も違ってきます。


インターフェースデザインは、同じデザインロジックで作ります。教材を作る各講師に任せてしまうと、ユーザーは教材ごとに使い方のルールを覚えなおさなければいけません。必ずテンプレートなどを先に作り、デザインルールに沿って作ってもらいます。 そのためには、教材開発ツールの開発なども必要とされることがあります。


「学習結果の評価法」は、①で考えた行動変容の目標を数値化します。評価方法をしっかりとシミュレーションして、その評価方法が正しいかを見極める必要があります。




③ 開発(Develop)

②デザインの過程で決められた仕様に沿って、具体的な教材の開発や購入、そしてeラーニングなど学習環境の整備も実施します。プロトタイプを作り、関係者でその出来を確認しながら、教材の数を増やしていきます。


e-Learningにおいては、利用時に想定される環境できちっと学習できるかなどを、開発時にしっかり確認します。また、学習者の心理にも配慮し、飽きないように、映像や写真・イラストなどビジュアライズしたり長期記憶に残るような工夫が必要になります。


こうして開発した教材は、使う前にテスターとなる人を手配し、ヒューリスティックなチェックや、教材の感想などを集め、ブラッシュアップしてから量産しないと、せっかくの作業が無駄になりますので、じっくり時間をかけて開発したいところです。


教材以外にも準備することは多々あります。例えば、運用段階で「アクセスできない」などのトラブルが発生するケースに備え、FAQやフォーム、最近ではSNSを使ったサポート体制など、学習に関する様々な用意を行います。



④ 実施(Implementation)


実際に研修を実施したり、実装済みの学習システムを稼働させます。eラーニングなどであれば、事前に教材や学習者のリストをシステムに登録していきます。このフェースでは様々なデータを取得できるので、あらかじめ設計段階で運用時のチェック項目を立てておくと良いでしょう。


受講期間中に受講状況の確認やお知らせなどの通知、トラブル対応などを行い、正しく教材が利用できてるかを確認サポートします。


運用が始まると、システムや教材の使い方についてのサポートが必要となるだけでなく、学習内容やモチベーションなどもサポートする必要があります。 最近は、FAQなどの静的なページを用意する以外に、SNSや掲示板などで、関係者からだけではなく、学習者同士で相互に協力して学習を進めるのも、大きな効果が認められています。



⑤ 評価(Evaluation)


評価については、事前に決めた評価法で検証し、研修後の受講者の習得度や行動変容などの教育効果の測定を行い評価します。課題を解決できる研修であったかどうか、研修結果を評価できる体制は機能したかどうかなども検証する必要があります。 知識やスキルが想定目標値にどのくらいたっせたか、時間・期間は適切だったか、落ちこぼれた人はいなかったかなどです。 これら研修全体や教材などの問題点を洗い出し、取得したデータは次回のデザインに役立てます。


この評価ですが、数値的なデータだけでなく、学習者にアンケートを書いてもらうなどもすると良いかと思います。 学習教材の評価では、「内容が正しく理解される作りだったか」「テキスト、動画、音声など、利用したメディアの選択は適切だったか」「テストは内容を正しく評価できているか」などを調査します。


コスト面も評価対象とされます。研修の置き換えなどでeラーニングにスイッチした場合は、比較してどちらが良かったのかを検証してください。研修とeラーニングをミックスした場合は、比率の検証も面白いかと思います。



最後に

前回に引き続き、インストラクショナルデザインについてのキーワードをご説明しました。企業教育も仕事と同様にPDCAライクに回す必要があります。インストラクショナルデザインで設計したシステムを、A→D→D→I→E→Aと繰り返すことで質を上げ、既成の教材や散発的な研修の実施よりも高い教育効果が上げられます。何よりも「行動変容」を目標にしていることで、将来の業績や成果に結びつく人材を育てることができるのです。


最後までお読みいただきありがとうございました。


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