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マイクロラーニングとは

ここ1年くらいで急に教育関連の展示会やセミナーなどで目にするようになった「マイクロラーニング」。 名前の通り、「短い(マイクロ)教材を使った学習」という意味ですが、その内容自体はまだあいまいなところがあります。また、注目を浴びたのは最近ですが、概念的には10年位前から言われていた「スキマ時間学習」「スナックラーニング」とほぼ同意とも言えます。


今回はこの「マイクロラーニング」について、その意味と、なぜ今これほど話題になっているかについて、簡単ではありますが、ご説明してみたいと思います。



目次



マイクロラーニングとは何か

マイクロラーニングは、教材の学習想定時間の長さが注目されがちですが、意味的には「学習スタイル」の方がポイントになってます。 よく使われる定義としては、「1~5分程度で終わる動画やWebコンテンツ等の細分化された学習コンテンツで提供し、学習者が好きな時にそれらにアクセスして自学する、教育・学習のスタイル」という言い方をします。 一回の学習は5分程度で完了するため気軽に取り組みやすく、スマホがあれば、寝る前や通勤時間中などのちょっとした時間にも勉強ができます。


米国では「マイクロ」の他にも「Bite-Size Learning」「Sliced Learning」とも呼ばれているようです。日本でも数年前に、「スナックラーニング(Snack Learning)」と紹介されてました。


マイクロラーニングでは、教材を細かな単位で区切ります。大体1~3分程度、内容によっては5分や10分以内の場合もあります。 ポイントとしては、「途中で分割しない」というのがお約束です。つまり、学習者の理解しやすさの面から、続編はなるべく作らず、綺麗に1回でまとめるのが良いとされてます。


ただし、繰り返しますが「短いコンテンツを教材で使う」というのがマイクロラーニングの本質ではありません。 マイクロラーニングが歓迎されている背景には、その「学習スタイル」や「必要とされる人」がポイントとなっています。




マイクロラーニングのポイント

マイクロラーニングのポイントとして、以下の5つ挙げてみました。


 

マイクロラーニングのポイント

  • ポイント① 学習時間を創出することが難しい人に向いている

  • ポイント② 学習を習慣化することが難しい人に向いている

  • ポイント③ 短いほうが記憶に残るので効率が良い

  • ポイント④ 教材を作るのが楽、修正も楽

  • ポイント⑤ 運用が楽

 

順を追って説明したいと思います。



ポイント① 学習時間を創出することが難しい人に向いている

マイクロラーニングの発想の元となったのは、社会人の学習時間の「なさ」です。しかしながら、日々要求される知識情報は増えていきます。1日1時間きちっと勉強できている人はごく僅かでしょう。


そこで毎日長い学習時間を確保するのは大変ですが、数分で完了する学習であれば、通勤や移動等のちょっとした時間を利用して、毎日手軽に取り組めるのではないかということで考え出されました。


また、学んだことを記憶や行動に定着させるためには復習が欠かせませんが、数分で終わる教材であれば復習にも取り掛かりやすいので、学習内容を定着させやすくなります。


また後述いたしますが、「教材の作りやすさ」もポイントです。分厚いテキストや数十分の尺の動画は、作成も更新も多くのコストがかかりますが、小ボリュームの教材なら、作成も更新も簡単になります。


忙しい人ほど、情報や知識の収集が必要なのに、その時間がないというジレンマに対する解決策として、マイクロラーニング教材が注目を浴びるようになったのです。




ポイント② 学習を習慣化することが難しい人に向いている

マイクロラーニングが向いてる人は忙しい人だけではありません。


時間が5分程度と決まってることで、動機付けが容易にできるため、気楽に始めてもらえるという大きなメリットがあります。また、家でデスクの前で学習するより、電車内など学習環境が変わることで集中力が上がるという効果もついてきます。


マイクロラーニングは、長時間の学習が苦手で集中力が続かない人が「学習の習慣化」に取り組む足がかかりとなる手法とも言えます。



ポイント③ 短いほうが記憶に残るので効率が良い

人間はたくさんの情報を一度に詰め込んでもすぐに忘れてしまいます。マイクロラーニングの教材は、短い単位なので記憶の定着が容易だと言われています。


人間の記憶の定着度について有名な研究「エビングハウスの忘却曲線」では、20分後には42%を忘れ、1時間後には56%、1日後には74%を忘れるとあります。 せっかく1時間に10個のことをみっちり勉強しても、次の日に74%も忘れてしまうのです。だったら、短い時間で1つか2つのことをしっかり覚えるほうが効率がいいと考えます。


 

(参考)「エビングハウスの忘却曲線」

“心理学者のヘルマン・エビングハウスは、人間の脳の「忘れるしくみ」を曲線で表しました。

  • 20分後には 42% を忘却し、58%を保持していた

  • 1時間後には 56% を忘却し、44%を保持していた

  • 1日後には 74% を忘却し、26%を保持していた

  • 1週間後には 77% を忘却し、23%を保持していた

  • 1ヶ月後には 79% を忘却し、21%を保持していた

上記のように、復習をせず、ただ暗記しただけだったら、1ヶ月後には8割を忘れているという結果です。 これは「頭が良い」と言われている人(=記憶が得意な人)であっても勉強が苦手な人であっても大差ありません。 「人間は忘れることで生きていける生き物」です。「嫌なことを忘れる」ことで精神的な健康を保つ仕組みなのかもしれません。”

 

(参考)効果的な記憶術は復習のタイミングから


エビングハウスの忘却曲線からわかることとして、「復習するタイミング」があります。 間違いなく復習しないといけないのは、「翌日」ですね。そして、だんだん復習の間隔を長くすることがポイントです。 記憶が定着するのは睡眠時だそうです。睡眠中に脳内で再生・整理される情報は、寝る直前のものが多いので「暗記物は寝る直前にやるとよい」という話はよく聞きます。

効果的な記憶のための復習のタイミング

  • ① 暗記して10分程度後に復習

  • ② 寝る前に復習

  • ③ 朝起きて復習

  • ④ 7日後~10日後の間

  • ⑤ 4週間後~6週間後の間

 

このように復習を効率的に行うことで、学習効率が上がります。 復習を効率的に行うには、復習もマイクロラーニングでタイミングよく行えばよいということになります。実際にマイクロラーニング教材では、復習用のコンテンツがセットになった構成のものが多いです。


マイクロラーニングは、記憶効率を上げるための学習方法とも言えます。



ポイント④ 教材を作るのが楽、修正も楽

企業で人材教育に携わる方がほぼ必ずおっしゃることとして、「自社オリジナル教材を作りたい」というのがあります。そのため「楽に教材を作れるツールはないか?」「自社教材を作ってくれる制作会社を紹介して欲しい」などよく相談されます。 そういった担当者の方に私は「では、まずはマイクロラーニング的な教材から始めてみてはどうでしょう?」と勧めます。


マイクロラーニングは短いので、制作作業の負荷も低く、継続して取り組みやすいからです。 教材にもよりますが、ツールのベースはPPTなどを使っても良いですし、映像などでケースドラマなどでわかりやすく、見て実体験できるような作りのものも意外に手軽に作れます。短い動画でストーリーを追う「エピソード型記憶」が最適といわれています。撮影も、細かい修正を気にしないで1発撮りでOKです。 単語や知識を覚えるのにはフラッシュカード形式の教材もあります。


前項で説明したように、学んだことを定着させるには復習が大切なので、復習の教材も同時に作りましょう。 復習コンテンツはクイズ形式で飽きさせない工夫をしても良いです。


短いからと言って単純にならず、アンケートなどで感触をつかみながら工夫すると教材のクオリティが上がっていきます。 習慣的な学習が続けられないユーザーのために、ゲーミフィケーション要素も入れて、学習回数に合わせて何らかのイベントを入れると、学習者も楽しめて継続しやすくなります。



ポイント⑤ 運用が楽

教材だけでなく、配信方法にも気を配る必要があります。


マイクロラーニングの学習スタイルでは、コンテンツに素早くアクセスできなければ意味がないので、社員全員がすぐに使えるプラットフォームを選ぶことが大切です。


現実的には「スマホ」がその有力候補になります。


コンテンツ配信のプラットフォームはLMSでなくても良く、シェアポイントなどのナレッジマネジメントシステムでもよいし、履歴不要であれば「企業内SNS」やメッセンジャーなどでもOKです。 大切なのは、頻繁に更新して、まめに通知・連絡してあげることです。PDCAサイクルを実行し、(結果や状況の変化に応じて)修正しつづけることが大切です。


 

参考)マイクロラーニングを使った運用例

① 教材を作る

  • 動画で撮影したものや、PPTに音声を付けたもの 受講者の学習への抵抗が少なく、映像や音声情報が理解を助け、記憶に定着しやすい。3分以内がベスト。

  • クイズ形式(フラッシュカード、2択・3択など片手で操作できるインターフェイス)

  • 動画形式(5分以内の短い講義動画や、見やすいドラマ形式のケース映像など)

② メールやSNSなど、受講者の目につきやすい方法でアナウンス

  • 通勤途中など場所を選ばず学習できるように配慮する。

③ 記憶の定着を考えて、複数回の配信も良い

  • あんまりしつこいと嫌がられるので、多くて2回程度、メールリンクからすぐ学習できるように、帰宅後や通勤時間を狙って配信する。

④ 1週間後、4週間後などに復習教材を配信。

  • 全体の視聴履歴の公開や、ランキングなどで競争意識を盛り上げる。

 

それにしても、なぜここにきてここまで注目を集めているのか?

それにしても、以前からあったマイクロラーニングがここにきてなぜここまで急激な広がりを見せているのでしょうか?


あるテレビ番組では、マイクロラーニングが好評だった年代が、デジタルネイティブでPCやスマホに慣れ親しんだミレニアル世代だったことが話題となってました。


もともとこの世代は、動画で育った世代で、読書時間が短く、本などの文字上の主体の教材に対する抵抗が強いと言われてます。また、コミュニケーションスキルを要する集合研修などが苦手な上、OJTによる教育なども定着しにくいと言われてます。マイクロラーニングは、OJTの補完や、知りたいときにすぐ調べられるマニュアル的な使い方が向いていますので、その面でもマイクロラーニングの効果が高いと評価されました。


海外では、IT企業を中心に大手企業からマイクロラーニングの導入が始まったことも注目された理由の一つではないかと思います。 ATD 2017 International Conference & Expoでは、調査対象の企業の38%がマイクロラーニングをすでに活用、42%が将来マイクロラーニング導入を検討しており、すでにIBMや造船会社などの多数の企業で効果が上がっていると報告されています。


マイクロラーニングの例としてよく出ているものとして、Googleの無料eラーニング「Googleデジタルワークショップ」があります。検索の仕組みやソーシャルメディアの活用方法などデジタル マーケティングの基礎を動画でわかりやすく学べます。



問題は図説テキストと動画を使って説明されており、動画終了後に各テーマに沿った演習問題を解く仕組みになっています。動画は大体2-3分で、解説者が登場し、飽きずに移動時間などで学習できるようになってます。


さらにポイントとして、目標設定するというのがあります。これは、「ネットショップを始めたい」「ソーシャルメディアを使って広告したい」など目標を設定し、目標に合わせてレッスンを受講することができます。 最後に認定証というご褒美がでるのも嬉しいポイントですね。



最後に

全ての教育をマイクロラーニングに転化することは無理です。やはり、時間をかけてじっくり学ぶ必要があることも多いのですから。私は、学ぶことをすべて1つのフォーマットでやろうとすること自体がナンセンスだと思います。学ぶ内容に合わせて、もっともわかりやすく頭に入る方法を取ることが大切だと考えます。


マイクロラーニングはその方法の1つであり、スマホという新しい勉強道具を使った方法の一つとして有効です。そして、学習は自発的であることが理想であり、今まで学習しなかった人がマイクロラーニング導入により自発的に勉強できるきっかけとなることが何よりも大切な効果だと思ってます。


また、「自社に合ったコンテンツを作る」という体質を作るきっかけになると良いと思ってます。これからの企業内教育は、業務内容に合わせて、様々な表現方法で自社用教材を内製化できる時代です。


最後までお読みいただきありがとうございました。




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