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コラム

リカレント教育とは

2021.10.07

今回のコラムのテーマは「リカレント教育」です。キャリアアップに必要なスキルを身につける方法として、「リカレント教育」が非常に注目されています。企業にとって、社会人経験を経てからの「リカレント教育」は、学習効果による自己成長が仕事に直結するというメリットがある反面、制度的な調整が難しく、実施に踏み切れていない企業も多いようです。

今回は、「リカレント教育」の概念の説明と、その具体的事例をご紹介します。

目次

  • リカレント教育とは
  • リカレント教育のメリット
  • 欧米のリカレント教育
  • 日本のリカレント教育の課題
  • 日本のリカレント教育の施策
  • 最後に

リカレント教育とは

教育は人生の初期(義務教育)だけで終わるのではなく、生涯に渡って続けていくことが大切で、必要に応じて個人が就労と学習を交互に行うことが望ましいと言われています。「リカレント教育」とは、広義で言えば、「社会人になってからも、学校などの教育機関に戻り、学習し、また社会へ出ていくということを生涯続けることができる教育システム」のことを指します。

もともとは、スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが初めに提唱し、1973年に経済協力開発機構(OECD)の教育政策会議で取り上げられ、国際的に知られるようになりました。 「リカレント教育」についてOECDでは、すべての人に対して、「義務教育や基礎教育終了後のフォーマルな学校教育を終えて、社会の諸活動に従事してからも、個人の必要に応じて教育機関に戻り、繰り返し再教育を受けられる、循環・反復型の教育システム」が提唱されました。また、「教育に関する総合的戦略であり、その本質的特徴は、個人の生涯にわたって教育を交互に行うというやり方、すなわち他の諸活動と交互に、特に労働と、しかしまたレジャーおよび隠退生活とも交互に教育を行うことにある」とも説明されています。

ちなみに日本の文部科学省によると、「リカレント教育」以下のように説明されています。

「リカレント教育」とは、「学校教育」を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念であり、その本来の意味は、「職業上必要な知識・技術」を修得するために、フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すことである。

我が国では、一般的に、「リカレント教育」を諸外国より広くとらえ、働きながら学ぶ場合、心の豊かさや生きがいのために学ぶ場合、学校以外の場で学ぶ場合もこれに含めている。

では、就労と学習を繰り返すリカレント教育には、どのようなメリットがあるかを考えて見たいと思います。

リカレント教育のメリット

「リカレント(recurrent)」という単語自体はあまり聞きなれている言葉ではありませんが、日本語では「反復、循環、回帰」を意味する言葉です。したがって日本では、「回帰教育」とか「循環教育」、「学び直し」と訳されることもあります。

OECDの提言は、働き方が多様化し続ける社会に適応するためには、生涯を通じての教育が必須であり、これまで人生の初期にのみ集中していた教育へのアクセスを「血液が人体を循環するように、個人の全生涯にわたって循環させよう」と言っています。そういった意味では「循環教育」というのが、しっくりくるかもしれません。

現実の問題として、急速に進化し、あっという間に陳腐化する既存の職業技術や知識を仕事をしながらキャッチしていくのは大変です。であれば、従業員がフルタイムの就学とフルタイムの就職を交互に繰り返すことによって、アップデートしていくリカレント教育のスタイルが、企業内教育の穴を埋め、学習ニーズを満たすシステムとして必要になってきます。

文部科学省は、「特に職業人を対象として高等教育機関が実施する職業指向の教育(リフレッシュ教育とも呼ばれる)の拡充について、大学等に寄せられる期待は大きい。」と、積極的にバックアップする姿勢を見せています。

社会人経験を経てからの「リカレント教育」は、学習効果による自己成長が仕事に直結します。

具体的なメリットとしては、

  1. 最新のスキルのアップデート、専門的なスキルを身につけることが出来る
  2. 新規分野への挑戦や、人材が不足している分野など、新たなキャリアに挑戦するきっかけになる
  3. 学習中に得た新たな人脈による刺激や意欲が、仕事でのモチベーションやイノベーションに活かされる
  4. 就労の経験を踏まえて学習するので、専門知識・技術の習得のペースはゼロから学習するよりも抵抗なく、要領良くできる
  5. スキルが上がり、労働者の生産性が上昇することで、賃金が上昇する効果がある

経営環境やビジネスモデルの変化に伴い、企業が従業員に求めるスキル・知識も変化すると思います。それらの変化に対応する人材を確保する手法として、企業はリカレント教育を推奨するのも有効です。

何よりも、パーソナリティを知っている既存社員がスキルをアップデートして戻ってきてくれる方が、不確定な採用を行うよりリスクは低いかもしれません。

欧米のリカレント教育

労働市場の流動性が高く、キャリアアップのために学習機関で教育を受ける習慣の強い欧米では、本来のリカレント教育の概念に近い取り組みが進んでいます。

企業側も、就労中に学習機会が必要となった場合は、比較的長期間にわたって正規の学生として就学することを推奨する風土ができつつあります。日本のビジネスマンの自己啓発とは違い、フルタイムの就学とフルタイムの就労を交互に繰り返すことができるのです。これこそ「リカレント教育」の概念にマッチした循環スタイルです。

具体例としては、スウェーデン、フランス、イタリア、ベルギーなどでは有給教育制度があり、アメリカではコミュニティカレッジが盛んです。

スウェーデンのリカレント教育

スウェーデンのリカレント教育に関わる成人教育機関・制度は多岐にわたります。運営は、国や自治体行っているケースが多く、EU加盟国らしく、移民向けのスウェーデン語教育や高度職業教育なども用意されています。自治体に資金を割り当てて、Komvuxという成年教育学校のシステムもあります。

推進するための法制度も以下のように整備されています。

  • 教育休暇法

    在職者が2年以上、教育訓練のための就学休暇を取れる権利と、その後の復職の権利を保障する法律。

  • 成人教育義務資金法

    労働市場訓練を受けている者に支給する「労働市場訓練手当」と初・中等教育レベルの学習を希望する低学歴の成人に支給する「成人学生手当」。

  • 高等学校教育の実質的義務教育化

    行政が義務教育が終わった人に高等学校教育を提供する義務付けと、20歳6か月までにKomvux(公立成人学校・成年教育学校)での高等学校教育を受ける権利を保障。

スウェーデン政府は、議案「成人の学習と成人教育の発展」を国会で承認しました。そこには「全ての成人は、人格の成長、民主主義と平等の実現、経済成長、雇用、正当な再配分を促進するという目的で、知識を広げ能力を発展させる可能性を与えられるべきである」ことが示されています。

日本のリカレント教育の課題

日本は、昔から続く長期雇用の慣行があるため、社会人になってから正規の学生として学校へもう一度戻って学習するという、「本来の意味でのリカレント教育」は馴染みにくい状況です。

仕事に必要な技術や知識は、キャリアを中断して外部で学ぶのではなく、就職した企業内で業務と並行して習得していくという状態が多いようです。そのため、日本のリカレント教育の概念は、海外より広く解釈し、企業などで働きながら学ぶ場合や、職業志向よりも心の豊かさや生きがいのための生涯学習などを含んで「リカレント教育」としているようです。

また、社会人が受講できる教育機関や生涯学習関連機関、カリキュラムも未だ不十分と言えます。また、公的な補助や支援制度、関係機関の連携は未発達な部分が多く、労働を中断して教育に参加することが難しい現状があります。

そもそも欧米のような有給教育制度がある企業は、日本ではほとんどありません。企業からリカレント教育の機会が得られたとしても、教育費用が増大した場合の行政からの支援や給付金が少ないと、学習者の負担が大きくなるリスクも懸念されます。この状態では学習者も仕事を中断して、学生に戻ることはできません。

現在、文部科学省や地方自治体では、生涯学習審議会や生涯学習センターなどを設置し、「生涯学習社会」の実現に向けて動いている流れがあり、今後この流れの延長で、社会人が学びやすい環境が整備されていくのか注目されます。

日本のリカレント教育の施策

2017年11月、安倍首相は第3回「人生100年時代構想会議」の席上で「リカレント教育」の拡充と財源の投入を宣言しました。

平成30年度の文部科学関係予算のうち、リカレント教育向けの予算は総額で106億円で、前年より6億円増加しました。使い道としては、教育訓練給付金制度を設けたり、介護や育児など様々なライフステージでも社会人として活躍できるための支援として、リカレント教育に関する予算を増やすなどの施策を行っています。
他にも、専修学校による地域産業中核的人材養成や男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援などがあります。ただ環境的に、まだまだ欧米のように「循環教育」としてのリカレント教育は少ないです。

現時点でもリカレント教育が受けられる教育機関としては、大学の社会人入学制度の多様化が挙げられます。社会人特別枠入試、社会人特別選抜制度、科目等履修生制度、夜間部・昼夜開講制度、通信教育、公開講座、専門職大学院、サテライトキャンパスなどです。

社会人特別枠入試は多くの大学で実施されており、政府の進める専門実践教育訓練給付金の支給対象のものもすでにあります。

筑波大学東京キャンパス社会人大学院のビジネス科学研究科などは、日中働いている人が通うことを前提にした夜間講座です。

大学以外にも、高等学校や専門学校、高等専門学校でも、公開講座という形でリカレント教育の取り組みを行なっている学校もあります。

地方で働いている人など、近場で学べないない人には、通信という手もあります。放送大学では、オンラインやビデオ受講がメインで300科目を開講しており、臨床心理士、司書、学芸員、社会福祉主事などの資格も狙えます。

日本女子大学では、再就職支援に特化したシステムの開講もあります。

リカレント教育に対応した教育機関とプログラム

教育機関 プログラム名称 内容
筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 社会人を対象として、東京キャンパスで受講できる。費用は135万円程度。
放送大学 教養学部 通信制で、300科目を受けらえる。費用は学士で4年間で70万程度(入学金は別)。
放送大学大学院 文化科学研究科 通信制※臨床心理学は除く。費用は2年で47万円程度。
日本女子大学 リカレント教育課程 再就職支援を目的とした過程。費用は26万円程度。

こうした政府主導の環境の整備の効果もあり、徐々に企業側にもリカレント教育の重要性を認識し始めたようです。

背景としては、転職でのキャリアアップや女性の社会進出の増加によって、職業技術や知識を外部の教育機関で学習したいという人材側のニーズが出てきたことが考えられます。
特に女性は、産休育休を挟んでもキャリアを積みたいというのであれば、企業内教育で継続的に仕事上必要な技術や知識を身につけることは難しいので、自らのキャリアパスに合わせて、自ら学習機会を作ることが求められてきます。

こうしたニーズに企業側が答えられなければ、自己研鑽意識の高い人材の流出というリスクを抱えなくてはいけません。今後は官民一体となって、リカレント教育のフレームを作っていく必要があります。

「人生100年時代」

「人生100年時代」という言葉は、ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏の両氏が、著書「LIFE SHIFT(ライフシフト)100年時代の人生戦略」の中で提唱しました。

この本の中で、過去200年間の統計を分析すると、人類の平均寿命は確実に延びていくと予測し、寿命が100年の時代(=人生100年時代)になることから、これまで寿命を80年として考えてきた人生設計を、抜本的に考え直す必要があると訴えています。

これを受け厚生労働省は、人生100年時代を見据えた経済社会システムを創り上げるための政策のグランドデザインを検討する会議として、2018年9月以降「人生100年時代構想会議」を行っています。

最後に

教育は人生の初期だけで終わりではなく、生涯にわたり続けていくことが重要であり、必要に応じて個人が就労と交互に行うことが望ましいとOECDは提言していました。

しかしながら日本では、仕事に必要な知識・技術の習得は、長期雇用を前提とする企業内教育に大きく依存してきました。しかし近年は非正規雇用の増加など、従来の雇用形態が揺らぎ始めており、いつでも誰でも、主体的に学び直せるリカレント教育の機会がより必要になっています。関連施策や受け入れ機関のさらなる整備が求められます。

今後、急速な少子化高齢化により、労働力人口の減少が懸念される一方で、健康寿命が延び、100歳まで生きることが普通になる「人生100年時代」がやってきます。

2017年に首相官邸で開催された「人生100年時代構想会議」では、すべての人に開かれた教育機会を確保し、何歳になっても学び直しができるリカレント教育の重要性が確認されました。
今後政府は、経済的な事情などで進学できなかった人や、出産、育児で退職した女性、または定年退職した高齢者などが「いつでも学び直し・やり直しができる社会」を目指すとして、文部科学省は18年度の予算において、リカレント教育や職業教育の充実に取り組む大学および専修学校等への支援にあてる予算を増額するなど、具体的な対応を進めています。

個人的には、リカレント教育や職業教育の充実は、日本のビジネスシーン全体のスキルアップに必須であり、人間が充実した人生を送れるためにももっと重視してもらいたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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