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コンピテンシーとは(その1)

コンピテンシーとは、「高業績を上げる人」に共通してみられる行動特性のことを指します。人材教育の現場では、高業績者、つまりハイパフォーマーの行動特性をまねることで、社員のパフォーマンスをアップしようという取り組みが行われています。また、人事評価基準としても「コンピテンシー」の概念が注目されています。


今回のコラムでは、「コンピテンシーモデル」や「コンピテンシーマップ」の作り方などを絡めながら、コンピテンシーについてご説明します。




目次



コンピテンシーとは

「コンピテンシー」という言葉は英語の「competency」を指します。名詞である「competency」の訳は「適格性」を意味し、その形容詞である「competent」とは「有能な、能力のある」という意味します。人材に使う場合には「一人前」とか「仕事を任せられる」というニュアンスで使われます。そこから、コンピテンシーとは、「高い業績に結び付く行動や思考の特性」のことを意味するようになりました。


コンピテンシーの考え方の起源は、1970年代に米国ハーパード大学のデイヴィッド・マクレランド教授( David McCleland, Ph.D.)の研究によるものです。デイヴィッド・マクレランド教授は、「達成動機」や「リーダーシップ」の研究で有名です。 1973年に国務省の依頼で、「学歴や知能レベルが同等の外交官(外務情報職員)が、駐在期間に業績格差が付く理由はなぜか」という調査をおこないました。


その結果、


 
  1. 学業成績や知能指数は外交官の業績の高低との間には顕著な相関関係は認めらない

  2. 外交官の職務成功確率の高い人物には3つの特徴的な行動特性(competence)が認められる

 

とマクレランド教授は結論付けたのです。


つまり、「学歴や知能の差と業績の相関関係はなく、高業績者にはいくつか共通の行動特性がある」ということです。 ちなみに、高業績を上げた外交官の3つの行動特性は、下記のように報告されています。


 
  1. cross-cultural interpersonal sensitivity to people from foreign cultures 異なる生活文化に対する豊かな感受性を発揮し、対人関係を巧みに行う

  2. the ability to maintain positive expectations of others despite provocation どれだけ困難な相手に対しても自制心をもって接し、建設的な人間関係を維持できる

  3. speed in learning political networks 政治的な人脈を素早く形成できる

 

「1」は、どんな国の相手にも人間性を尊重して接するという対人関係のスキルの高さを表します。 「2」は、その国の文化に対する理解力や感受性が優れており、環境対応力が高いことを示します。 「3」は、異国でも社交的で人的ネットワークを構築するのがうまいという、まさに外交官に必須のスキルと言えます。


おもしろいことに、入職時に行われた歴史や語学の試験の結果が高い人より、低い業績の人物ほど、のちに優秀になる人が多いという結果でした。これは「学力よりコミュニケーション力や人間性が、外交官の適性においては重要である」ということを暗に示しています。


マクレランド教授はその後の研究で、学力試験における業績が人生における業績/パフォーマンスにあまり関係ないという結論から、学力だけではなく、「仕事などで人生の成功を収める人の行動特性」を理論的かつ実務的に考えるべきとし、「competence(コンピタンス、のちにコンピテンシー)」の考え方を強調しています。 その後、コンピテンシーは米国を中心に、企業の人事における考課要素として発展したのです。



できる人とはどういう人か?

コンピテンシーの定義としては、「ある職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性」などと説明されます。どの職場にも、高い成果を挙げる優秀な人材=高業績者(ハイパフォーマー)は一定の割合でいるはずです。同じ環境にいながら、他のメンバーよりも優れた結果を残す彼らは、周囲の社員とは異なる考え方や行動特性を持っている傾向にあります。 このハイパフォーマーのどの行動がその人を「仕事のできる社員」にしているのかを明らかにし、それを真似をして、他の社員全体の行動の質を上げていこうというのがコンピテンシーの活用です。


では、「高業績者(ハイパフォーマー)」、つまり「できる人」とはどういうタイプの人でしょうか?その人たちはほかの人とどこが違うのでしょうか? それは職場や仕事の内容にもよるかと思いますが、様々な業種で共通して必要とされてるものから考えてみます。


 

できる人:高業績者(ハイパフォーマー)

  • コミュニケーション能力が高く、同僚に仕事を依頼したりするのがうまい

  • 仕事が正確で確実にやり遂げるため、組織内の信頼や尊敬を得ている

  • 専門分野に対してスキルアップを怠らず、新しいアイディアを持っている

  • 情報感度が高く、常に様々な分野にアンテナを張り、業務に活かしている

  • ビジネス上のネットワーク作りがうまい

 

上記のような「高業績者」の「行動特性」が「コンピテンシー」ということになりますが、これをより具体的にわかりやすくしたものが「コンピテンシーモデル」です。



コンピテンシーモデルとは

上記のような「できる人の行動特性」は、業種や職場環境によって微妙に違いがあって当然です。企業によって重みづけも異なります。


ハイパフォーマーに共通する行動・思考様式を具体的な言葉でまとめたものが「コンピテンシーモデル」であると説明しましたが、そもそも、コンピテンシーの定義には学術的に確定したものはなく、研究者やコンサルティング会社などが、それぞれの考え方を「コンピテンシーモデル」としてまとめ発表しているという状況です。 よく見かけるものは以下のようなものがあります。



1.コミュニケーションスキルが高い

他人と円滑に人間関係を構築する能力に長け、ノンバーバルなコミュニケーションが可能な人です。知人や同僚、顧客などと個人的な関係を作り出し、維持し、発展させる力があります。

具体的には、「共感する力」、「感情を効果的にコントロールする力」などのスキルを持った人です。



2.知識や情報を活用する能力

様々な状況において、知識や情報等を効果的に活用する力があります。情報の本質について、様々な状況・条件を考慮して、批判的に深く考えることができる力を持つ人です。



3.ストレス耐性

一部職種では特にストレス耐性や我慢強さを重視されています。その他の能力を持っていても、ストレス耐性がないと仕事が続かないためです。高いストレス耐性は仕事を進める上で必要なコンピテンシーです。



4.自律的に行動する能力

近年、企業が特に力を入れているのが「自律型社員の育成」です。そのために、自律している人をコンピテンシーモデルとして可視化させる試みが盛んにおこなわれています。自律しているとは、明らかな自己概念を伴い、意思を持った行為を行えるなどです。


このほかにも、細かく細分化して「テクノロジーを活用する能力」「言語,記号,テクストを相互作用的に用いる力」「利害の対立を御し、解決する能力」「権利、利害、責任、限界、ニーズを表明する能力」など、様々なコンピテンシーモデルの定義があります。


コンピテンシーモデルは小さな単位であればあるほど、実際の仕事の行動モデルとして反映されやすくなります。また、職種や職階などにより、重視される項目が異なります。例えば、金融関係では「知識や情報を活用する能力」が重視されますし、消費者と直接やりとりする場合など、「ストレス耐性」が高くないとダメな職種も多くあります。企業風土としてストレス耐性が要求されるところもあるかもしれません。いやな話ですが。



コンピテンシーはハイパフォーマーへの「行動インタビュー」から探す

実際にコンピテンシーモデルを作成する場合は、まず各グループのハイパフォーマーを見つけて、「行動インタビュー」を行う必要があります。モデル像に偏りを作らないためにも、複数のハイパフォーマーに行動インタビューを実施しましょう。 成功事例などを取り上げて、その成功が「どのような状況で、どのように行動したか」によるのかを聴取します。こうしてインタビューから集められた行動例を整理し、コンピテンシーモデルを作成するための「高い業績に結び付く行動・思考」をまとめます。


一時的な成功だけでなく、「普段からどのような思考で生活しているか?」「ピンチやトラブルに直面したときに、どう行動するか?」など、より細かくすることで、成功時の行動特性の裏付けがわかってきます。ポリシーではなく具体的な行動事実を拾うのがポイントです。そのため、ストーリーで追っていきます。したがってそれなりに時間がかかる作業です。


こうしてインタビューからハイパフォーマー特有の「職務行動・意識」がわかってきます。


例えば、業績の良い営業マンの「職務行動・意識」としては下記のような特性が得られます。


 

業績の良い営業マンの「職務行動・意識」

  • 「達成思考」が強く、数字を常に意識している

  • 「対人影響」が強く、話すのではなく、影響を与える力がある

  • 「顧客思考」が強く、顧客からの質問事項を一生懸命に調べ対処する、その場しのぎをせず、ごまかさない

 

これに対して、業績の悪い営業マンの「職務行動・意識」は、相対する結果が出てきます。


 

業績の悪い営業マンの「職務行動・意識」

  • 成果よりも顧客と話すことを楽しみ、やたらと知識をひけらかす

  • 顧客の質問にきちんと対応しない(口先でごまかす)

  • 数字に関心が低く、安易に値引きなどを行う

  • 自分で手を動かさず、部下などに作業をさせる

 

他の例として、成果の出る良い開発職の「職務行動・意識」では下記のような特性が報告されています。


 

成果の出る良い開発職の「職務行動・意識」

  • 「達成思考」が強く、障害や問題を乗り越えることを苦にしない

  • プロセスより成果を執拗に追求する

  • 「分析的思考」が強い

  • 「対人影響」が強く、関係部署や上司、顧客の了解を得る事の重要性を意識している

 

これに対して、成果の出にくい開発職の「職務行動・意識」は下記の通りです。


 

成果の出にくい開発職の「職務行動・意識」

  • 実作業にのめり込みすぎて、パソコンの前から動かない

  • 成果よりもプロセスに関心があり、結局は自分が楽しんでいる

 

最後に、管理職についても見てみましょう。


 

業績の良い管理職の「職務行動・意識」

  • 「達成思考」が強く、目標達成に立ちはだかる諸問題を解決していく

  • 「分析的思考」が強く、明確な方針、戦略を打ち出す

  • 「対人影響」が強く、上司、関連部門への一定の影響を与える

  • 方針を守らせることに真剣になる

 

業績の悪い管理職の「職務行動・意識」

  • 部下を成長させることがへた

  • 汗を流して率先垂範、走り回って何もかも一人でやってしまう

  • 即断即決だが、その場対応の泥縄なことが多い

  • 前例や手続を重視しがちで、予測可能な安定的な行動を好む

 

「率先垂範」タイプが、「結局何でも一人でやって部下を育てない」というのはよく耳にしますね。



最後に

ハイパフォーマーの強いコンピテンシーは「本人にとっては当然」のことなので、自覚していないケースもあります。そのため、行動インタビューは、多少「引き出す」技術がいる作業です。引き出しにくい場合は、アンケート集計方式の360度評価などと組み合わせるのも良いかと思います。また、コンピテンシー評価や検査を専門的な外部コンサルタントに委託し、コンピテンシーモデルの素案を作ってもらっても良いです。


少し長くなりましたので、続きは次回「コンピテンシーとは(その2)」でご説明したいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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