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ダイバシティとは

近年、「ダイバシティの推進」をスローガンに掲げる企業が増えています。 経営戦略としての「ダイバシティ」の考え方は、多国籍・多人種の典型的な国家である1990年代のアメリカで発達しました。日本でも日本経団連などで推進されています。またここ数年のダイバシティ推進で、大きく業績を上げている企業もあり、かなり注目されています。


今回はこの「ダイバシティ」についてお話ししたいと思いますが、「ダイバシティ」と言ってもいろいろな視点がありますし、若干誤解されている点もあるかと思いますので、内容をダイバシティの意味を整理した「ダイバシティとは」と、その推進施策の1つである「ダイバシティマネジメントとは」の2回に分けて掲載させていただきます。



目次



ダイバーシティとは

「ダイバーシティ」とは、英語の「diversity」で「多様性、種々、雑多」と訳され、意味的には「多様性」をあてています。 では「多様性(たようせい)」とは何でしょうか?


よく耳にするのは「生物の多様性」と言った使い方です。これは地球環境の中で様々な「種」の生き物が共存している事を指しています。 Wikiで「多様性」は、「幅広く性質の異なる群が存在すること。 性質に類似性のある群が形成される点が特徴で、単純に”いろいろある”こととは異なる。」と定義されています。 この「幅広く性質の異なるものが存在すること」は、ビジネスでは「多様な人材」を指し、戦略としての「ダイバーシティ」とは「多様な人材を活かす戦略」という感じになるかと思います。


ビジネスにおける「多様性」の意味としては、下記のように解釈するのが一般的なようです。


”メンバーにある様々な違いを尊重して受け入れ、その「違い」を積極的に活かすことにより、変化しつづけるビジネス環境や多様化する顧客ニーズに最も効果的に対応し、企業の優位性を創り上げること”


「様々な違い」をデメリットからメリットとしてうまく活用するために、「様々な違い」を尊重して受容する環境を築けば、メンバーのコミュニケーションが円滑になり、さらに多様な視点が「新たな価値」を創造する可能性を高めてくれるというのがダイバシティ活用の狙いです。




ダイバシティの歴史と日本企業への導入

冒頭で少し出ましたが、ダイバーシティの発祥の地は米国です。当初は女性や有色人種などマイノリティの雇用機会の均等として進められ、差別是正や人権尊重が主な目的でした。 このように、初期は企業の社会的責任や福利厚生的な側面が強かったのですが、やがて1990年代後半になると、アメリカ社会の「人口構造の変化」がダイバーシティのコンセプトを大きく変化させていきます。


1990年代後半になると、米国の白人男性労働者は高齢化が進み、少子化傾向で人口が減少する反面、労働力における女性や白人以外の移民・有色人労働者の割合が急激に増えていきます。 この問題は「労働力の変化(雇用の変化)」だけでなく、消費者の変化、つまり、「市場の嗜好」にも現れ始めました。今までは「白人」をメインターゲットにしていた市場に、それ以外の「女性」や「移民・有色人」が作り出すニーズの割合が増えたのです。これは市場を形成する消費者の割合の変化が、企業収益に大きくかかわってくることになり、企業は自社内の「女性」や「移民・有色人」の声に耳を傾けるようになりました。


このように2000年代の米国では、「市場」と「雇用」双方からダイバーシティの重要度が大きく増したのでした。最初のきっかけは人権問題ですが、現在のダイバシティは、市場で有利になり、多くの消費者・株主・労働者に支援されて経済成長するための経営戦略として期待され取り入れられているのです。


では日本はどうかと言うと、日本は移民は少ないですが、米国よりさらに極端な人口減少時代に突入しています。高齢者の増加、若年層の減少、一人暮らし世帯の増加など、これまでの人口構造とは大きく異なり、さらにこれが「国内市場の縮小」という変化を生み出します。そして、少ない市場でやっていけなくなった日本のビジネスシーンは、IT化とグローバル化に活路を求めるようになり、企業は持続的に成長するために、ダイバーシティの推進に力を入れるようになりました。


旧日経連の「ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」では、以下のように定義されています。


「異なる属性(性別、年齢、国籍など)や従来から企業内や日本社会において主流をなしてきたものと異なる発想や価値を認め、それらをいかすことで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、利益の拡大につなげようとする経営戦略」


「日本社会において主流をなしてきたもの」とは、「大卒男性社員の終身雇用」といったような、かつては日本成長を支えた日本流ビジネス概念を指し、それが今や成り立たなくなってきたことを示しています。 ただ、外国籍のメンバーとの協業の機会のまだまだ少ない日本では、ダイバシティはどちらかと言うと男女の雇用機会均等などの観点から注目されることが多いと思います。 しかしながら、ダイバシティの本質は、単なる男女平等やパートタイマーや外国人労働者の雇用だけの問題ではありません。性別や人種と言った異なる属性を認めるだけでなく、彼らから生み出される異質な発想や価値までを取り入れるが、本当のダイバシティなのです。 その意味で言えば、日本のダイバシティは今後さらに本格的な変化を求められるようになります。


 

“(参考)ダイバーシティの具体的な属性”

ダイバシティの理解を深めるにあたり、まず、ダイバシティにおける属性の違いにはどのようなものがあるかを考えてみます。 ダイバーシティは2タイプの属性から成ります。

1つ目は「その人の本質的なこと」です。具体的には「年齢、性別、国籍、人種、障がい、LGBT(性的マイノリティ)※」といった属性です。 ※LGBT=レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーを指す表記。

2つ目は、本質的なもの以外のその人を取り巻くものです。具体的には「雇用形態、婚姻状況、宗教、嗜好、収入、親の職業、出身地、価値観」など、その人を取り巻く環境の属性です。

一般的にダイバーシティの属性は「性別、年齢、国籍」など表面的にわかりやすいものが取り上げられますが、実際にはそれ以外に表面的には見えない「家族構成、趣味や価値観」などの要素も含めて考える必要があります。

 



ダイバーシティを企業に取り入れることとはどういうことか?

ダイバーシティの概念を取り入れるのであれば、企業は、個々人の「違い」を尊重し受け入れ、その「違い」に価値を見つけ、性別、年齢、国籍等にかかわらず個人の成果、能力、貢献だけを適正に評価し、全員が組織に平等に参画し、能力を最大限発揮できるようにすることが必要です。


これらを実行することにより、「組織のパフォーマンスを向上させること」がダイバーシティの目的です。 ダイバーシティを成功させている企業は、多様な人材の採用や定着ではなく、その先の「活用」にフォーカスして取り組んでおり、企業内の人材を誰ひとりとして無駄にしないことへつなげています。 このことについては、次回「ダイバシティマネジメントとは」で詳しくご説明いたします。



ダイバシティのメリット

企業がダイバーシティの推進に積極的になってきているのは、ダイバーシティがビジネスでの競争優位性をもたらしてくれるからです。 では、どのようなメリットがあるのでしょうか?


ダイバーシティが企業へもたらすメリットは様々ですが、よく言われているのは下記のメリットです。


 

ダイバーシティのメリット

  1. 広範囲からの優秀な人材の確保と活用

  2. 多様な市場での有利性の向上

  3. メンバーの創造性・革新性の向上

 

各メリットについて、1つずつ見ていきましょう。



1.広範囲からの優秀な人材の確保と活用

IT化とグローバル化が進む21世紀の高度情報化社会では、高度な知識とスキルを持つ優秀な人材を国内だけで確保するのは非常に困難です。企業に高い成果を出してくれる有能な人材は、世界規模での争奪戦から確保する必要があり、そこに性別や国籍などの属性が入り込む余地はありません。


また、優秀で多様な人材ほど、ダイバーシティを真剣に取り組む企業は魅力的に映り、そのような人材が集まって来ると言われています。世界のトップ企業がこぞって、CMなどで多国籍の社員を見せて、自社のダイバシティ性をアピールするのはそのためです。



2.多様な市場での有利性の向上

海外企業でダイバーシティが重要視されるのは、優秀な人材の雇用の面だけでなく、多様化する消費者の嗜好や価値観をビジネスに結びつけるのに多様な社員が有効だという理由もあります。つまり、多様な社員がいれば、多様な顧客ニーズや要求に対して、営業、マーケティングや商品開発などで、迅速かつ的確に対応しやすくなるからです。

ある企業の例では、スペイン系住民が多く住む地域に、スペイン語を話せるスペイン系社員に営業を担当させたところ、売り上げが大きく伸びました。同様に他の企業でも中国系顧客が多い店舗に中国系社員を登用し、業績を向上させたりしています。

このようなメリットを得るためには、会社自身が多様になることが求められます。



3.メンバーの創造性・革新性の向上

創造性・革新性のある商品を開発するには、似たような性質の均一的なチームからはあまり期待できないかもしれません。 同質性の高い企業では、皆が似たような視点や価値観を持つため、革新的なアイデアや問題解決策は生まれにくく、多様化する顧客のニーズに適切に応えられなくなります。そのため、組織の競争力を低下させるのです。


革新性や創造性は、異なる視点、経験やアイデアなどが刺激し合い相乗効果によって生まれることが多いと言われます。 異質性の高い企業なら、多様な人材のさまざまな経歴、個性や能力をフルに発揮させることにより、変化激しく不確実な経済環境に柔軟に対応することが可能になります。シリコンバレーの研究者やエンジニアたちの過半数以上が「外国生まれ」という事実は、そのような「多様な人材の集まり」から、今までにない多くの斬新的な製品やサービスが生み出されている証拠です。




ダイバシティの課題

導入することで、企業の競争力を高めることができるダイバシティですが、問題点やデメリットも当然あります。 ダイバシティの一番の問題点は、異質なもの同士が協業することによる「誤解」や「摩擦」などが引き起こす「トラブルの懸念」です。


昔の日本企業のように、同質性の高い集団は、一旦決定されれば、コミュニケーションが取りやすく、スクラムを組んでスムーズで効率的に物事が進んでくれます。


一方、異質性の高い集団はどうしても、コミュニケーションへが取りづらく、異質ゆえの表現差や考え方の違いなどから、軋轢・摩擦・対立・誤解が発生しやすいものです。結果、それがチームワーク・パフォーマンスの低下や大きなトラブルに発展する危険をはらんでいます。これがダイバーシティの大きな課題です。


つまり、先のマネジメントを何も考えずに、単に多種多様な人材を採用するだけでは、企業メリットにつながらないばかりでなく、かえってデメリットが生じ、その結果、チームの生産性やパフォーマンスが低下してしまうことになります。異質なチームであるだけでは高い生産性や仕事の質は約束されないのです。


逆に、違いを適切に受け入れ、効果的にマネジメントすることにより、高い創造性を維持したまま、問題解決やチームの生産性へプラスに影響させることができます。 そのためにも、制度を充実させ多様な人材を「採用・定着」させるだけでなく、全社員の態度と行動にダイバーシティの尊重を反映させることにより、様々な違いを「受容する企業風土」を築くことが重要です。 そのために、全社員のダイバーシティへの正しい理解と適切な行動を促進する教育や意識改革が不可欠なのです。



最後に

今回は「ダイバーシティとは」についてお話しさせていただきました。


次回「ダイバシティマネジメントとは」では、このダイバシティの課題をもう少し詳しく説明し、それを解決する手段として、「ダイバシティマネジメント」についてご説明する予定です。


最後までお読みいただきありがとうございました。



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